【ポイント】
・モンスーンの時期には,蚊媒介疾患(デング熱など)が増加します。
・蚊,ダニ,蜂,蟻・シロアリ,ゴキブリ,アタマジラミなど,当地で頭を悩ませる虫対策を以下でご案内しておりますので,是非ご一読ください。
【本文】
1 蚊対策:世界中で最も多く人を殺している生き物は蚊!
(よくある体験談)
・蚊が家の中に10匹ほどいて、案の定刺された。対策は特にしていない。
(医療知識)
・デング熱・チクングニア熱:それぞれウイルスが人→蚊(昼行性)→人で感染。特別な治療法はなく,最悪の場合死に至ることもある。当地で使用可能なワクチンは存在せず、蚊に刺されないように身を守るしかない。
・マラリア:寄生虫(マラリア原虫)に感染した蚊(夜行性)に刺されることで感染する。治療が遅れると,死に至ることがある。抗マラリア薬の予防内服にて身を守る方法があるが,当地では推奨していない。いずれにしても,蚊に刺されないよう身を守ることを忘れてはならない。
・日本脳炎(日本脳炎ウイルス)も蚊を介して感染する。予防接種歴を確認しておくこと。
(予防策)
・ボウフラが湧くような水たまりをなくすなど,家の周りで蚊が発生しそうな場所を作らない。
・子供でも使用できるMOSPELやOFF!という虫よけローションあり。夜は腕や足元に塗るとよい。地方では偽物も出回っているため、信頼できるお店で購入すべし。
・Mortein Peaceful Nights(蚊取りリキッド)を部屋の広さに合わせて2-3個つける。カートリッジ式でリキッドは無香料とラベンダーがある。
・POWER PLUSという蚊取りリキッドは1個で効き目抜群。ただし、乳幼児にとっては薬の刺激が強い可能性あり。また、熱を持ち、火傷の恐れがあるため、子供がいる家庭では推奨しない。
・Morteinよりハーブ系の殺虫スプレー(室内の虫よけスプレー)もあり。シトロネラ、ユーカリ、ラベンダーなどの天然素材。
・Finis(液体)を霧吹きで部屋に撒く。Morteinスプレーより安価で長持ち。ただし、しずくが垂れるので、子供がいる家庭では推奨しない。
・1回押すだけで長時間効果が持続する日本のスプレー(例えばKINCHO、フマキラー、アース製薬など)も有効。日本の家より天井が高く、空間が広い部屋では、スプレー回数を増やすこと。
・窓際に掛けるタイプの虫よけ(日本製)も有効。パキスタン人へのお土産にお勧め。
・電気の誘蛾灯は薬剤の副作用の心配がなく,子供の手の届く場所に設置しなければ子供がいても安全。日中も使用することで、家屋の蚊や蛾も一気に減る。
(対応策)
・新聞などで,蚊媒介疾患患者の発生状況をチェックしておく。
・蚊の発生しやすい時期(モンスーンの8月から11月頃まで)に,下痢や喉の痛み,鼻水などの症状を伴わない発熱が3日以上持続する場合は,蚊媒介疾患の可能性も考慮し,医療機関を受診する。
2 ダニ対策:ダニだけじゃない、カメムシにも注意!
(よくある体験談)
・新しく家に入るとき、休暇等で家を長期不在にしたとき、旅行先でホテルやゲストハウスに泊まったときの就寝中にダニに刺された。
(医療知識)
・家の掃除を怠ると、埃や垢を好物とするチリダニ(人は刺さない)がベッドマットや布団に発生する。さらにチリダニを餌とするツメダニが発生する。ツメダニに刺されると、10mm前後のポツポツとした発疹ができる。
・トコジラミ(南京虫、Bedbug)は分類学上、カメムシ目に属する。夜間に活動し、刺されると一円玉くらいの発疹ができる。部屋の隙間に潜んでおり、大量発生すると、寝具を捨てて業者に駆虫を依頼するしかない。
(予防策)
・絨毯や新しく購入した洋服にもダニがいる可能性あり。ひとまず天日干しをして掃除機で吸い取る。
・ベッドマットは両面なんども裏返しながら干す。さらに布団叩きなどで直接たたき落とす。
・1週間に一度はシーツの洗濯を。シーツを2枚重ねにして、上(肌の触れる方)のシーツは2-3日毎に交換するとより効果的。
・Finish Pump Spray (小型の空気入れのような形をした殺虫剤)を部屋中にまいて、窓も扉も閉めたまま1日置いておくと、退治できることも。
・宿泊施設でダニ被害に遭ったときは、Khatmal(カトマル、ウルドゥー語でダニのこと)と言って、部屋を変えてもらう。また、トコジラミを自宅(日本への帰国時も含め)へ持ち帰らないように、荷物は床に置かず、台の上に置く。
(対応策)
・刺された後のアレルギー症状(痒み・発疹など)は、発現時期(数時間後〜数日後)も含めて人それぞれ。痒み止めの軟膏(ムヒなどの市販薬でOK)を塗る。冷やすと痒みは和らぐ。
・市販薬にて改善しない痒みや眠れない程の痒みを伴う場合は,医療機関を受診する。
・こまめに爪を切り、手を洗うこと。掻き傷から菌が入ることも。特にこどもは要注意。
3 蜂対策:当地のアシナガバチは毒あり!
(よくある体験談)
・プールからあがって服を着たら(靴を履いたら),蜂に刺された(中に蜂がいた)。
・干していた洗濯物の中に蜂が紛れ込んでいた。
(予防策)
・公園で遊ぶ際は、白っぽい服や帽子を着用する。
・フラワー系やバラの香りなど、匂いのある整髪料や香水はつけない。
・刺された場合,特に子供は症状がひどくなりがち。蜂に近寄らないよう目を配る。
・家の外や庭などに蜂の巣をつくることもしばしば。早めに使用人さんに対処してもらおう。
・天井のファンにぶつかって、床に落ちていることも。踏まないように要注意。
(対応策)
・刺された際、針は残らない(針が残るのはミツバチのみ)。蜂の毒は水で洗い流す(ポイズンリムーバーがあれば吸い出しながら水で流す)。洗った後は冷やす(血管を収縮させ、毒の吸収を遅らせる)。
・刺された部位の腫れや痒みに応じて外用薬を使用(軽症であればムヒでもOK)。
・刺された後、数分〜15分以内に吐き気や息苦しさ、全身の発疹などが出現した場合には、急いで医療機関を受診。一度刺された人は二度目以降に症状が悪化しやすくなるため、医療機関への受診をためらわないこと。
4 その他:蟻・シロアリ、ゴキブリ、毛ジラミ、いろいろ出ます!
(予防策&対応策)
〜蟻・シロアリ〜
・シロアリはコンクリートやタイルのわずかな隙間から入り込み,地面から壁などをつたって上に向かって土の道を作る。
・POWER PLUS(蚊取りリキッド)やTigerパウダーを蟻の通り道、巣の入り口に撒く。
〜ゴキブリ〜
・近所で下水タンクなどの消毒があると、自分の家でゴキブリが大量発生する。
・ホウ酸団子やゴキブリキャップが効果的。
・MorteinのCOOPEX POWDERも効果的。夜,通り道に撒いて、朝起きると沢山の死骸が・・・。
〜アタマジラミ〜
・清潔、不潔に関係なく、うつる時はうつる。
・子供は時々点検も兼ねて大人がしっかり洗髪してあげよう。幼稚園児は特に、頭を掻いていなくても、耳の裏や髪の毛の生え際は要チェック。
・当地では大人も多い。青空床屋などの道具が清潔でない店での散髪は避ける。
・成虫はカンギーという櫛ですいて取り、爪でつぶす。卵は一つ一つ取る。
・Anti-Liceと書かれた市販のチューブ塗薬(地肌に塗り付ける)、Hedrinというシラミ用スプレー、アタマジラミ用シャンプー(LiloKil他)を併用するとより効果的(約1週間)。
・シャンプーは、泡立てて5分ほど置いてから流す。色の薄いタオルでタオルドライをすると、アタマジラミがタオルにつくが、大概まだ生きているため、確実につぶす。一緒にベッドを共有している親や兄弟も同時にシャンプーを使用する。
〇疾患に関する具体的な情報に関しては、以下をご参照ください。
外務省海外安全ホームページ パキスタンの医療事情: