6月2日、ルクセンブルク政府は、当国の新型コロナウイルス感染状況及び今後の規制緩和の方針等について会見を行いました。概要は以下のとおりです。
(ベッテル首相)
1 新型コロナウイルスの感染状況
(1)感染状況は大幅に改善しており、新型コロナウイルスに関連する数値は良い方に向かっている。1日あたりの新規感染者数の平均は、先週に比べて減少しており、4月12日の週では203人であったのに対して、5月24日の週では70人となっている。大規模検査では約3万件の検査が行われ、そのうち18人の住民が陽性となった。5月31日の大規模検査では7,200件検査したが、陽性者は出ず、状況はコントロールできていると判断する。6月1日の検査においては、6,655件の内、44件が陽性となり、陽性率は0.66%であった。
(2)病院における状況も良くなってきており、現在通常病棟の患者は16人、集中治療中の患者は5人であり、以前に比べて減少している。また下水の分析結果も良い方向へ向かっていることを示している。
(3)また、前週と比較した陽性率も低下している。4月12日の週の陽性率は2.09%であったのに対して、5月24日の週の陽性率は0.81%であった。加えて全ての年齢層で陽性率が低下している。例えば2月15日の週では80歳以上の年齢層の陽性率は1.2%であったが、5月24日の週では0.1%となった。70歳〜79歳では1.3%であったが、0.1%となった。60〜69歳では1.2%であったが、0.3%となった。50〜59歳では1.6%であったが、現在は0.6%となった。これは高年齢で減少しており、ワクチン接種の影響が現れ、陽性率を可能な限り低く抑えることに大いに役立っている。
2 ワクチン接種・検査戦略
(1)40歳以下の方を対象としてワクチン接種が始まる。6月1日までに413,000回分のワクチンが当国に届いた。これは合計210,560人分のワクチンに相当する。その内、ファイザー社ワクチンが283,520本、アストラゼネカ社ワクチンが79,200本、モデルナ社ワクチンが32,400本、ジョンソン・エンド・ジョンソン社ワクチンが13,000本となっている。
(2)6月1日の夕方までに、当国では357,000回のワクチンが接種された。第1回目の接種を受けた人は232,400人、第2回目の接種を受けた人は124,000人である。2日、1日当たりの接種数が初めて8,000人を超えた。ワクチン接種センターのキャパシティも増えたが、依然としてワクチンの在庫は充分ではない。現在、これまでに1回目のワクチン接種を受けた当国居住者は37.12%であり、18歳以上の人の内、46.2%が接種を受けている。
(3)今までに納入されたワクチンの内87%が使用され、56,000回分の在庫がある。この在庫は6月9日までに実施される予定の53,000回分のワクチン接種に必要となるため、今後7日間で在庫のある全てのワクチンが使用されることとなる。2回目の接種を保証するために十分な在庫を確保することは重要であるが、政府はワクチンを溜め込むことはない。現在、ワクチン接種者の平均年齢は58.35歳である。
(4)しかしワクチンの納入に関しては、まだ大きな不安要素がある。6月1日、ファイザー社は、6月7日の週の納入量が当初の予定より少なくなると発表した。また、ジョンソン・エンド・ジョンソン社は欧州連合が第2四半期に確約していた5500万回分のワクチンを確保できず、1800〜3400万回分のワクチン接種となると発表した。
(5)6月2日から6月末までの暫定的な納入予定は以下の通りである。ファイザー社ワクチンが132,210本、アストラゼネカ社ワクチンが30,200本、モデルナ社ワクチンが36,000本となっており、ジョンソン・エンド・ジョンソン社ワクチン数は不明である。これらの供給によって、310,000人にワクチン接種が可能となる。しかし、ジョンソン・エンド・ジョンソン社が当国に対して供給する数が少ないため、予定よりも50,000〜55,000人分少ないワクチン接種となる。
(6)余剰ワクチンは、6月2日の時点で合計145人に接種された。アストラゼネカ社製ワクチンのウェイティングリストには、約34,000人が登録されており、そのうち約4,500人には案内状がまだ出されていない。
(7)ワクチン接種の進捗状況、人々の行動、そして季節の影響によって、現在の状況は改善されているが、危機が去ったかのように振る舞う時期ではない。この危機を脱するためには、ワクチンの接種が唯一の方法である。例えば、海外の状況は依然として厳しい。
(8)病院における状況が改善されたおかげで、当国は海外からの患者を受け入れることができた。例えば、フランスからの11人の患者が当国で治療を受けた。
3 6月13日以降の新たな規制緩和方針の発表
新たな規制緩和方針について、今後国民議会において議論が行われる。
(1)外出制限令が解除される。
(2)HORESCA部門において閉店時間は午前1時(25時)まで延長される(現在は午前6時から午後10時まで)。
(3)個人宅への訪問やテラス席の人数制限は、最大10人までとなる。
(4)HORESCA(レストランやカフェ)部門においては、2つの選択肢がある。1つ目は、最大4人までのテーブルのみをレストランが提供する場合、検査の陰性結果は必要ない。2つ目の選択肢である4人以上のテーブルの場合は、新システム"Covid Check"を使用する。"Covid Check"とは、新型コロナウイルスの検査結果(PCR検査もしくは48時間前以内の(薬局等における)簡易検査)、感染からの治癒、ワクチン接種済みかどうか、を示すQRコード付きの文書である。
(5)10人〜50人を集客する場合、2メートルの社会的距離をおき、マスク着用、着席義務なしの選択肢、もしくは、保健省に登録された"Covid Check"の選択肢がある。
(6)51人〜300人規模の集客の場合、2メートルの社会的距離を確保し、マスク着用、着席義務の選択肢、もしくは、保健省に登録された"Covid Check"の選択肢がある。"Covid Check"はこのような大きな集まりの際に、マスクや社会的距離、着席義務を免除することができる。
(7)300人以上のイベントの場合、衛生的な基準が保健省によって検証される。保健省の検証した衛生基準の元であれば、最大2000人規模のスポーツ大会が可能となる。(8)店舗やショッピングセンター、公共交通機関では、引き続きマスクの着用が義務付けられる。しかし、ショッピングセンターにおいては"平方メートルルール"が廃止され、ショッピングセンター内や駅構内における飲食が許可される。
(9)6歳から30歳までの人々は、無料の大規模検査バウチャーを受け取ることができる。
(10)企業に対する経済的支援に関しては、段階的に支援を縮小していく方針であり、デレス中間層大臣が記者会見を行い、その具体的内容を説明する予定である。
(11)結論として、より正常で、より自由になる一方で、責任が求められる。当国政府にとって重要なのは、"検査、治癒、ワクチン接種"という3つの手段を重ねて採る必要はないということである。いずれの手段によっても感染拡大防止は可能である。
(レナート保健相)
4 新型コロナウイルスの感染状況
(1)政府の目的は、できるだけ多くの自由を認めることであり、そのために"Covid Check"のような新しいシステムが開発された。パンデミックが終わったわけではないので、国民が実施されている対策を引き続き尊重することが大切である。パンデミックは終わったわけではなく、当国では幸運にも感染が減っているが、国際的な状況は違う。最も懸念されているのは、インド型変異株である。しかしより重篤な症状を引き起こすかどうかはまだ不明であり、この点が不安材料となっている。
(2)新しい"Covid Check"は、7月1日からEUレベルにおける相互運用が可能となるが、当国政府の目的はこのシステムをより早く準備することである。主な考え方は、個人が証明書を受け取るというもので、この証明書は標準化された文書であり、安全なQRコードが付いているため偽造できない。この証明書は、EU諸国間で相互運用できるように、最低限の保証が必要となる。
(3)ワクチンを接種済みの人は簡単で、ワクチンを摂取すればQRコードを受け取ることができる。最低限の基準は、欧州医薬品庁(EMA)が認可したワクチンであることである。これに加えて、WHOによるワクチンの条件付きリストも認められており、EUの各国レベルでのみ認可されているワクチンを認める議論も行われている。2回接種が必要な種類のワクチンの場合は2回目の接種を受けた日からその人はワクチン接種済みと見なされる、1回接種型のワクチンの場合は、ワクチン接種から14日後に"接種済み"と見なされる。
(4)また、"治癒した"人の定義にも最低基準がある。PCR検査で陽性反応が出た後、11日目以降は"治癒した"人となる。この後、6ヶ月間は"治癒した"人とみなされる。
(5)"検査済み"の定義は、(薬局等における)簡易検査が48時間前に行われたか、PCR検査が72時間前に行われた場合である。この簡易検査の陰性証明書を海外旅行に使用する場合は、他の手続きが必要となるが、これについては保健省から改めてお知らせする。
(6)これらに加えて、"その場での簡易自主検査"を行う可能性も残されているが、これはあくまで国内での使用を目的としたものであり、海外での使用を目的としたものではない。当国においては、QRコードを提示できない人のために、簡易検査が可能だが、海外への旅行を希望する方については、外国または航空会社が、当国のコロナ検査の基準とは異なる特定の規則を課す場合がある。
(7)6歳から30歳までの方には、旅行目的にも使用できる検査を受けるためのバウチャーを配布する。学校の教室におけるマスク着用の義務は残るが、学校の屋外ではマスク着用の義務はなくなる。
(8)音楽活動では、2メートルの社会的距離を開ければ、最大50人の演奏が可能で、300人までのイベントでは、保健省に登録された"Covid Check"が必要となる。
(9)スポーツでは、最大10人まで一緒にスポーツをすることができる。10人以上の場合は、2メートルの社会的距離をとるか、マスクを着用する必要がある。
(10)多くのことが可能になったが、主にインドの変異株によるリスクもある。高齢者施設や病院などでは、特に弱い立場にある人たちを守るために、対策はより厳しくなる。高齢者施設や障がい者支援施設、病院などに出入りする職員や訪問者には、簡易検査や"Covid Check"による確認を受ける義務が生じる。
(11)対策のバランスをとり、規制緩和を可能にすることが重要である。インドの変異株は早く広がっているだけで、実際にはより重篤な感染症を引き起こさないことを願っているが、今のところ、そのような情報は得られていない。
(12)改正コロナ法に盛り込まれるもう一つの重要な要素は、ワクチン接種済みの人はもはや検疫を受ける必要がないということである。
【質疑応答】
(1)(6歳から30歳までのバウチャーについて、何度でも使えるのか)6歳から30歳までの年齢層は、まだワクチン接種を受ける機会はなく、ワクチン接種の順番待ちをしている。そのため、この年齢層の人々には、旅行目的でもこの選択肢を提供する。このバウチャーは、希望する日に利用できるため、有効期間が長く、希望する検査機関でPCR検査を受けることもできる。
(2)(アストラゼネカ社ワクチンのウェイティングリストに登録者のワクチン接種が終了した後、対象者を30歳以下の人たちにも開放する予定はあるか)未知の部分が多いので、これから議論していくことになる。また、当ワクチンは、30歳未満に制限があるワクチンでもある。来週の国家倫理委員会とのやりとりにも盛り込みたい。
(3)(海外でワクチンを接種した人を"Covid Check"システムに入力できるか)それがQRコードと文書の本質であり、EU加盟国間の相互運用性を確保している。QRコードは、すべての携帯電話で読み取ることができる。
(4)"Covid Check"に関して、他のEU加盟国がこの証明書を必要としない場合は)この文書は、調整の取れた文書を可能とするが、それにどのような権利を結びつけるかは、各国の差配にかかっている。なお、これは欧州レベルにおいても、欧州委員会と欧州議会で議論され、加盟国の合意を得たものである。
(5)(公共の場におけるアルコール摂取の禁止も解除されるか)解除される。
(6)(ナイトクラブをオープンする見通しはあるか)HORESCA部門には、ナイトクラブも該当するが、300人までの人数制限と"Covid Check"が条件となる。
(7)(6月13日以降海外に滞在する場合、"Covid Check"の3つの要件のうち1つを満たしていれば、72時間以上海外にいても検査は必要ないか)その通りである。
(8)(期待されたよりもワクチン接種の回数が減った今、優先順位を決めるための議論はあるか)来週検討するが、配達状況による。
(9)(QRコードを生成できるのは誰か)インフォマティクス・センターが作成し、データは保健省に集約される。ワクチン接種と陽性反応の結果は、保健省と共有される。また、(薬局等における)簡易抗原検査も同じ手順で行われる。
(10)(レストランに関しては、もっと簡単で一般的な方法はないのか。"Covid Check"ではすべてが複雑に思える)QRコードがない人は、その場で簡易検査を行うことができる。簡易検査はその施設でのみ使用でき、再利用はできない。簡易自主検査は、その場で行うことが主な目的である。簡易検査の結果を改ざんしたり、写真を撮ったりした人を知っているが、それは国民を守るという原則に反しており、不法行為でもある。
(11)(子供へのワクチン接種については)来週議論する予定である。
(12)(現在のワクチン接種率はどの程度か)高年齢層では70%以上の接種率となっている。
在留邦人の皆さま及びご旅行中の皆さまにおかれましては、今後も政府発表や報道、下記サイト等を通じて最新情報の収集に努めてください。
https://covid19.public.lu/en.html
■ワクチン接種戦略に関する説明
https://covid19.public.lu/en/vaccination.html
■在ルクセンブルク日本国大使館新型コロナウイルス関連情報サイト
https://www.lu.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00017.html
(ご連絡先)
在ルクセンブルク日本国大使館
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