医療情報(パキスタンで知っておくと得する医療知識と対応策)

以下の項目に分けて等を対応策等をご案内しております。

1 感染性腸炎:世界の常識、「お腹をこわしたらコカ・コーラ

2 急性上気道炎 (感冒):たかが風邪、されど風邪

3 けが(出血):大理石の床に要注意

4 打撲、ねんざ:道路に穴が空いていないか、下も注意して歩こう

5 気候風土、過労及びストレスからくる病気:最近笑ったのはいつですか?

医療機関に受診するタイミングを知っておこう〜

1 感染性腸炎:世界の常識、「お腹をこわしたらコカ・コーラ

(医療知識)

・感染性腸炎は原因がいろいろ(ウイルス性、細菌性、寄生虫)。

 - ウイルス性腸炎:嘔吐、腹痛、水様便が特徴。発熱は1-2日で改善

 - 細菌性腸炎:腹痛、粘血便が特徴。吐き気はあっても嘔吐は少ない。高熱が持続

 - 寄生虫による腸炎:当初はウイルス性腸炎に似ているが、次第にしぶり腹や粘血便が出現(ウイルス性として対応するも、5日以上たってもよくならない場合に疑う)

(対応策)

・ウイルス性の場合は脱水予防と整腸剤(ビオフェルミン、ザ・ガード、正露丸などの市販薬でも可、当地ではECOTECを薬局にて購入可)にて対応する。細菌性や寄生虫を疑った場合には、追加処方が必要なため医療機関へ受診を。

・感染性腸炎かなと思ったら、食事に注意する。水様便では水分摂取のみ、消化不良便ではお粥など。確実に普通便になるまで普通の食事は控える。2-3日水分摂取のみで過ごす覚悟も必要(病原体を出し切る)。下痢止めは推奨しない。

・水分摂取に関して、水やお茶はダメ(尿として流れるだけ)。体内に吸収されるためには、水分に加えて塩分や糖分が必要(ポカリスエットの粉末等を推奨、当地ではOEMという経口補水液用の粉末を薬局にて購入可)。しかしながら、当地ではミネラル・ウォーターに細菌が混入している粗悪品があるので注意を要する。

・当地においては、炭酸飲料水が一番安全(蓋を開けた際、プシュという音で新品であることが確認できる)。どんなに田舎へ行っても入手可能であり、「お腹をこわしたらコカ・コーラ」も覚えておこう。ただし、清涼飲料水を常時摂取すると糖尿病を発病するため、あくまで緊急時対応ということを忘れずに。

・1日水分摂取のみで過ごす場合は、最低でも2Lを目安に摂取を。

(ワンポイントアドバイス

☆生水や生野菜に注意するのは当然だが、飲食の制限がストレスとなることも。十分注意しつつ、当地の食事を楽しもう(但し、腹八分目)。

パキスタン料理を食べるときは、特に手洗いは重要。気をつけているパキスタン人は手を洗った後は自然乾燥もする。

☆当地の油(使い回し)や香辛料でお腹を壊すこともあり。この際、胃液を薄めることで消化不良(腹痛)を誘発する可能性もあるため水分摂取はほどほどに。

☆人それぞれに腸内細菌叢が異なり、効果的な整腸剤は異なる印象あり。自分にあった整腸剤を見つけておくことをお勧めする(ちなみに筆者はヤクルトだが、悲しいかな当地では超高級で入手困難)。

A型肝炎や腸チフスの予防接種歴も再確認を。

★当地では抗菌薬や抗寄生虫薬が用意に手に入るが、耐性菌を誘発する可能性も。短期間での頻回摂取や予防薬としての長期服薬は厳禁

2 急性上気道炎 (感冒):たかが風邪、されど風邪

(医療知識)

・通称「風邪」とは、ウイルスが原因で起こる急性上気道炎のことである(抗菌薬は不要)。

・鼻水、咽頭痛、痰の絡む咳、発熱、頭痛、声の変化などの症状を呈する。

・5日以上続く場合は、似たような疾患(以下に列挙)との区別が必要となり、治療法も異なるため、自己診断は厳禁(医療機関へ受診を)。

 - 咽頭炎咽頭痛(のどのいたみ)と発熱を呈し、鼻水や咳はほとんどない

 - 副鼻腔炎:発熱と頬部に片側性の疼痛あり、咽頭痛や咳はほとんどない

 - 風邪後の遷延性咳嗽:風邪に引続き、痰の絡まない咳のみ持続

 - 喘息様気管支炎:風邪症状に加え、喘息のような症状が出現してくる

 - 気管支炎・肺炎:夜間も続く咳、発熱を呈し、鼻水や咽頭痛はあっても軽度

 - 花粉症:くしゃみ、鼻水、目のかゆみを呈し、咽頭痛や発熱はほとんどない

 - インフルエンザ:高熱、寒気、頭痛、関節痛、吐き気など、全身症状を強く呈する。流行性あり。予防接種はあくまで重症化の予防である。

 - デング熱・チクングニア:高熱、全身倦怠感、関節痛など、インフルエンザと症状が似ており、季節性あり(蚊が媒介)。また、5日目以降に全身に発疹が出現する。稀に出血傾向を呈する(口内出血や鼻血など)

(対応策)

・日頃から、うがい&手洗いを習慣づけること。マスクを過信しない。防蚊対策も入念に。

・風邪(ウイルス)に対する根本的な治療は安静(自己免疫力の回復)であり、症状を和らげる目的で薬を用いる(対症療法)。

・風邪の引き始めには葛根湯や市販の総合感冒薬(ルル、パブロン等)を服薬する。症状が5日以上続く場合は、上記疾患との鑑別並びに症状に合わせた処方が必要となるため、医療機関へ受診を。

(ワンポイントアドバイス

☆「のどの痛みにのどヌールスプレー」という決まり文句があるが、逆にのどヌールスプレーでのどの痛みが増強する方も。自分にあった市販薬を見つけよう。

☆風邪かなと思ったら、当地の国民的ハーブティー“Johar Joshanda”もお勧め(TIME紙 Best of Asia 2008 に選出)。冬には必須のパキスタン漢方薬

3 けが(出血):大理石の床に要注意

(医療知識)

・当地の新聞に救急車の電話番号が載っているが、いつ来るかわからない、救命救急士が乗車しているわけではない、公立病院に運ばれる等の理由にて、利用は推奨しない。緊急時であれ、医療機関受診の際は、自分または周囲の人が配車すること。

・動物に咬まれたり、人に噛まれた場合は、必ず医療機関を受診(狂犬病に対する予防接種や抗菌薬の処方を要する)。

破傷風の予防接種歴も再確認しておく(日本においても10年毎の追加接種が必要)。

(対応策)

・水道水にて、土などの汚れがなくなるまで傷口をきれいに洗う(消毒薬はなくてもOK)。

・出血を伴う場合は、タオルなどで圧迫止血を行い(約5〜10分)、止血後絆創膏を貼る。

・鼻血の場合は、少し前屈みの姿勢で座り、親指と人差し指で鼻をつまむ(約10分)。

・多量の出血は圧迫しながら、ただちに医療機関へ。

(ワンポイントアドバイス

☆当地の床は大理石のため、食器を落としたり、ベッドや階段からおちて大けが(緊急輸送)に至ったケースもあり。ベッドを購入の際は要注意

4 打撲、ねんざ:道路に穴が空いていないか、下も注意して歩こう!

(医療知識)

・「手足のしびれ」、「指趾が動かせない」場合は骨折の可能性大、ただちに医療機関へ。

・交通事故の場合は必ず医療機関へ(内臓出血も念頭に一通り検査を推奨)。

(対応策)

・打撲に対するRICE 処置。

 - Rest 安静,無理に動かさない

 - Ice 保冷剤等で冷却(可能な限り長めに)

 - Compression 腫れる前に包帯をきつめに巻いて圧迫

 - Elevation 患部を高くあげる

・頭を打った場合、意識障害や嘔気・嘔吐が出現してこないか、24時間要経過観察を。意識障害や嘔吐を認めた場合は、医療機関へ。

5 気候風土、過労及びストレスからくる病気:最近笑ったのはいつですか?

・以下の症状にあてはまる際は医療機関へ受診を。

 - 頭痛(原因疾患は問わない):休息にて改善しない場合や吐き気を伴う場合

 - 筋緊張性頭痛:慢性的な肩こりを伴う頭痛

 - ストレス性胃潰瘍(十二指腸潰瘍):空腹時(起床時)や食後の上腹部痛

 - 蕁麻疹(アレルギー性もあり):眠れない程の痒みをともなう全身性の湿疹

(ワンポイントアドバイス

☆太陽の光(蛍光灯じゃダメ)を浴びて自律神経のバランスを整えよう

☆皆と笑うのはいいが、一人で笑うのは効果薄。逆に、YouTube等の動画や映画を見て、一人泣きするのはお勧め。何かが一緒に流れていくかも

*具体的な医療機関に関しては、以下をご参照下さい。

・ドクターズリスト:イスラマバード日本人会 日本人会広報委員会 2018年2月発行

・外務省 海外安全ホームページ パキスタンの医療事情

https://www.anzen.mofa.go.jp/medi/pakistan_medi.html