10月19日付け露大統領令(ウクライナ領被占領地域への戒厳の導入に係る大統領令他)について

●19日、プーチン露大統領は,ロシアが連邦構成主体として「編入」したとする「ドネツク民共和国」、「ルハンスク人民共和国」、「ザポリッジャ州」、「ヘルソン州」への戒厳の導入に関する大統領令及び被占領地域への戒厳導入に関連し連邦構成主体で実施される諸措置に係る大統領令に署名しました(いずれも即日発効)。

国防省内務省、連邦保安庁、非常事態省、国家親衛軍庁等は、3日以内に「編入」したとする4「地域」でとるべき措置について提案することとなっています。連邦憲法的法律「戒厳令」(2002年1月30日付け)規定の措置もとり得るとのことです。

●今回の大統領令では、「編入」された上記4「地域」にとどまらず、ロシア各地の連邦構成主体においても広範な防衛・緊急事態保護措置が導入される旨が規定されており、今後の動向・影響等について注視する必要があります。

【参考】

I. 「ドネツク民共和国」,「ルハンスク人民共和国」,「ザポリッジャ州」及び「ヘルソン州」領内における戒厳の導入に関する大統領令

 ロシア連邦の領土一体性に対して武力が行使されていることを踏まえ、ロシア連邦憲法第87条第2項並びに2002年1月30日付け「戒厳に関する」連邦憲法的法律第1−FKZ号第3条及び第4条に従い、以下を決定する:

1 2022年10月20日0時以降、「ドネツク民共和国」、「ルハンスク人民共和国」、「ザポリッジャ州」、「ヘルソン州」において、戒厳を導入する。

2 ロシア連邦政府に対し、ロシア連邦国防省ロシア連邦内務省ロシア連邦民間防衛・非常事態・災害復旧省、ロシア連邦保安庁ロシア連邦国家親衛軍庁、ロシア連邦大統領特別プログラム総局の提案に従い、3日以内に、戒厳が導入される地域に適用される措置に関する提案を提出する(よう命ずる)。

3 必要に応じ、ロシア連邦において、戒厳の有効期間に、2002年1月30日付け「戒厳に関する」連邦憲法的法律第1−FKZ号に規定されている他の措置をとることが可能である。

4 本大統領令は、ロシア連邦議会連邦院の承認を受けるために直ちに提出される。

5 本大統領令は、公布の日に発効する。

II. 「2022年10月19日付け大統領令第756号に関連してロシア連邦構成主体で実施される諸措置に関する」大統領令

ドネツク民共和国」、「ルハンスク人民共和国」、「ザポリッジャ州」及び「ヘルソン州」領内における戒厳の導入に関連し、ロシア連邦構成主体首長(行政府組織)の活動効率を高めるため、以下を決定する。

1 「ドネツク民共和国」、「ルハンスク人民共和国」、「ザポリッジャ州」及び「ヘルソン州」領内において、当該ロシア連邦構成主体首長(行政府機関)が、2002年1月30日付け「戒厳に関する」連邦憲法的法律第1−FKZ号に規定されている権限、経済分野、権力執行機関及び地方自治体機関における動員措置並びに自然的及び人為的な性格の非常事態からの民間防衛、国民及び領土の保護に関する諸措置の実施に関する権限、また、ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍事部隊並びに機関の需要及び国民の要望を満たす諸措置の実現に関する権限を持つ体制(最高対処態勢)を導入する。

2 本大統領令第1項で言及されているロシア連邦構成主体の領内において、1996年5月31日付け「国防に関する」連邦法第61−FZ号及びロシア連邦のその他の規範的法規に従い、領土防衛を実施し、省庁間調整機関(領土防衛本部)を創設する。

3 「クリミア共和国」、ベルゴロド州、ブリャンスク州、ヴォロネジ州、クルスク州、ロストフ州及び「セヴァストーポリ市」において、当該ロシア連邦構成主体首長(行政府機関)が、経済分野、行政当局機関及び地方自治機関における動員措置、領土防衛措置並びに自然的及び人為的な性格の非常事態からの民間防衛、国民及び領土の保護に関する諸措置の実施に関する権限、また、ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍事部隊及び機関の需要及び国民の要望を満たす諸措置の実現に関する全権を持つ体制(中等対処態勢)を導入する。また、当該ロシア連邦構成主体首長(行政府機関)は、次の諸措置を実現する:

(1)公共秩序の保護及び社会的安全の保障の強化、軍事的重要国家施設及び特別施設、国民の生命活動及び交通機関並びに通信の機能を保障する施設、エネルギー施設、また、人々の生命及び健康並びに自然環境にとって高位の危険となる施設の保護の強化

(2)交通機関及び通信の機能を保障する施設、エネルギー施設、人々の生命及び健康並びに自然環境にとって高位の危険となる施設の業務に関する特別体制の導入

(3)常設又は一時的滞在施設の確実な提供を伴う安全な地区への住民の一時避難

(4)領域への出入域に関する特別体制の導入及び保障、また、域内の移動の自由の制限

(5)交通車両の移動の制限及び検問の実施

(6)交通機関及び通信の機能を保障する施設の業務、印刷、計算センター及び自動化システムの業務に対する管理の導入、及びそれら業務の国防のための利用

4 本大統領令第3項で言及されたロシア連邦構成主体を除く中央連邦管区及び南連邦管区に属するロシア連邦構成主体の領内において、当該ロシア連邦構成主体首長(行政府機関)が、領土防衛措置並びに自然的及び人為的な性格の非常事態からの民間防衛、国民及び領土の保護に関する諸措置の実施に関する決定を行う権限、また、ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍事部隊及び機関の需要及び国民の要望を満たす諸措置の実現に関する全権を持つ体制(高位準備態勢)を導入する。また、当該ロシア連邦構成主体首長(行政府機関)は、次の諸措置を実現する:

(1)公共秩序の保護及び社会的安全の保障の強化、軍事的重要国家施設及び特別施設、国民の生命活動及び交通機関並びに通信の機能を保障する施設、エネルギー施設、また、人々の生命及び健康並びに自然環境にとって高位の危険となる施設の保護の強化

(2)交通機関及び通信の機能を保障する施設、エネルギー施設、人々の生命及び健康並びに自然環境にとって高位の危険となる施設の業務に関する特別体制の導入

(3)交通車両の移動の制限及び検問の実施

(4)交通機関及び通信の機能を保障する施設の業務、印刷、計算センター及び自動化システムの業務に対する管理の導入、及びそれら業務の国防のための利用

5 本大統領令の第1、3、4項で言及されていないロシア連邦構成主体の領内において、当該ロシア連邦構成主体首長(行政府機関)が、自然的及び人為的な性格の非常事態からの国民及び領土の保護に関する諸措置の実施に関する決定を行う権限、また、ロシア連邦軍、その他の軍隊、軍事部隊及び機関の需要及び国民の要望を満たす諸措置の実現に関する全権を持つ体制(標準準備態勢)を導入する。また、当該ロシア連邦構成主体首長(行政府機関)は、次の諸措置を実現する:

(1)公共秩序の保護及び社会的安全の保障の強化、軍事的重要国家施設及び特別施設、国民の生命活動及び交通機関並びに通信の機能を保障する施設、エネルギー施設、また、人々の生命及び健康並びに自然環境にとって高位の危険となる施設の保護の強化

(2)交通機関及び通信の機能を保障する施設、エネルギー施設、人々の生命及び健康並びに自然環境にとって高位の危険となる施設の業務に関する特別体制の導入

6 実現する諸措置のリスト、期間、特性及び実現の手順は、ロシア連邦構成主体首長の決定により、当該ロシア連邦構成主体の領内の現状及び生じているリスクを考慮し、独自に決定されることを定める。

7 ロシア連邦構成主体首長に、本大統領令に規定される諸措置の実現のためにロシア連邦構成主体の作戦本部を創設する(ことを命じる)。ロシア連邦構成主体の作戦本部の長は、ロシア連邦構成主体首長である。ロシア連邦構成主体の作戦本部には、ロシア連邦国防省の代表者、ロシア連邦内務省ロシア連邦民間防衛・非常事態・災害復旧省、ロシア連邦保安庁及びロシア連邦国家親衛軍庁の関連機関の代表者、また、ロシア連邦構成主体の公的機関の代表者が含まれる。

8 本大統領令に基づく権限内で下されたロシア連邦構成主体(作戦本部)首長の決定は、当該ロシア連邦構成主体の行政機関、地方自治体機関、当該ロシア連邦構成主体の領内で活動する連邦権力執行機関の地域機関、当該ロシア連邦構成主体の領内で活動する合議機関を含むその他の諸機関、当該ロシア連邦構成主体の領内の居住地(滞在地)に登録され、かつ(又は)所在する国民に対して実行が義務付けられている。

9 本大統領令は、公布の日に発効する。

【問い合わせ先】

在ロシア日本国大使館領事部

電 話:(495)229−2520

メール:ryojijp@mw.mofa.go.jp   

HP:http://www.ru.emb-japan.go.jp/japan/index.html