医療情報(薬剤耐性腸チフスに対する注意喚起)

【ポイント】

・2018年に入り、英国及び米国において、パキスタンからの薬剤耐性腸チフス輸入症例が報告されており、2017年には、のべ6例の輸入症例が日本でも報告されています。

・2歳以上の小児及び成人に対し、腸チフスの予防接種(Typhoid vaccine)が有効です。当地の医療機関でも予防接種を行っております。

・帰国後に体調不良で症状が疑われ医療機関を受診する際は、必ずパキスタンへの渡航歴を申告して下さい。

【本文】

1 パキスタンにおける薬剤耐性腸チフスの現状

・当国では、2016年に薬剤耐性腸チフスの蔓延が問題となり、その後も患者が多数発生しています。

・2018年に入り、英国及び米国において、パキスタンからの薬剤耐性腸チフス輸入症例が報告されており、2017年には、のべ6例の輸入症例が日本でも報告されています。

・今月、当国保健省から注意喚起が発表されました。

2 腸チフスについて(予防接種も含め)

(1)感染源

 腸チフスは、サルモネラチフス菌による細菌感染症です。患者や保菌者の便や尿に汚染された飲食物(水、氷、生野菜、生肉など)を口にすることで感染します。

(2)症状

 感染してから発症するまでの期間は、通常1〜2週間です。症状は、急激な高熱に始まり、腹痛、頭痛、全身倦怠感、下痢よりむしろ便秘を伴うことが多く、ときにピンク色の発疹や下血、意識障害が認められることもあります。

(3)治療方法

 腸チフスは細菌感染症であり、抗菌薬にて治療しますが、薬剤耐性腸チフスの場合、有効な抗菌薬が限られます。なお、治療後もしばらくチフス菌を排出することがあります(保菌者)。

(4)予防方法

・2歳以上の小児及び成人に対し、腸チフスの予防接種(Typhoid vaccine)が有効です。当地の医療機関でも予防接種を行っております。

・十分に加熱した飲食物を口にするようにしてください。

・果物は清潔な水でよく洗い、皮をむいて食べるようにしてください。

・こまめに手を洗うようにしてください。

3 医療機関の受診、帰国後の注意点

・3日以上持続する発熱や解熱剤内服後も持続する発熱に加えて、上記症状を認める場合には、医療機関を受診されて下さい。

・腸チフスは感染してから症状が出るまでに数週間を要することもあります。帰国後に体調不良で症状が疑われ医療機関を受診する際は、必ずパキスタンへの渡航歴を申告して下さい。