海外安全対策情報(マレーシア、平成29年10月〜12月)

 今般、平成29年10月〜12月のマレーシア海外安全対策情報を更新しましたので、ご参考までお送りします。

1 治安情勢概説

(1)最近の動向

ア 2017年中、クアラルンプール(KL)市内ではひったくりが多発し、12月4日には、クアラルンプール市警察本部長がひったくり等の「街頭犯罪(Street Crime)」に遭遇しないよう、注意を呼び掛けました。

【注】街頭犯罪とは、ひったくりやスリ・置き引きなど、街頭で日常的に発生する犯罪を総称するものです。

ひったくりの多くは、単独又は二人乗りのバイクで近付いて敢行されるため、昼夜を問わずバイクの接近には警戒する必要があります。また、いわゆる「歩きスマホ」に興じる被害者に背後から近づき、スマートフォンを奪い取って逃走する手口も多く報告されています。

イ 一方、日常的に自動車を運転する方は、信号待ち・交通渋滞等で一時停車中の自動車にバイクが近付き、追い抜きざまに助手席等の窓ガラスを破壊し、車内のバッグ等を強奪して逃走する「スマッシュ・アンド・グラブ:Smash and Grab」と称する犯罪に注意する必要があります。 

この犯罪はKL市内だけでなくマレーシア各地で発生しており、この犯罪を防ぐには、「助手席にバッグや衣服を置かない」、「窓ガラスには防犯フィルムを貼る」などの予防策を講じることをお勧めします。

ウ 2017年8月以降、マレーシア国内の複数の都市において、制服警察官の姿をした複数の男性が外国人に旅券携行の有無を質問し、携行していない場合は「罰金」と称して金銭を要求する事案が発生しています。KL市内でも、外国人が制服警察官姿の男性に多額の現金を要求される事案が発生しています。本事案は、外国人がよく利用するホテルの周辺で発生している模様ですので、ホテル周辺で制服警察官の姿をした者が不自然な動きを見せている場合には、十分注意してください。

(2)テロ情勢

ア マレーシアでは、11月下旬から12月中旬にかけ、警察当局による大規模なテロ取締り活動の結果、外国人を含むテロ容疑者20人を逮捕しました。また、年末には、けん銃と銃弾をマレーシアに密輸しようとした学生が、パキスタンの空港で逮捕される事案も発生しています。

    現在のところ、マレーシアにおけるテロに関する具体的な脅威情報や注意喚起は発出されていませんが、在留邦人及び旅行者の皆様にあっては、「いつテロが発生してもおかしくない」との危機意識を持ちながら行動することが求められます。

イ マレーシア国家警察は、大規模な摘発とともに国内主要交通機関や大規模商業施設、観光地等において軍との共同パトロールを実施しています。また、空港・税関での保安検査を強化し、あわせて国民にテロへの警戒を呼び掛けています。このため、空港の出入国カウンターでは、しばしば検査強化のため、待ち時間が1〜2時間に及ぶことがありますので注意が必要です。

ウ 2017年中、欧米各国では、観光スポットや多数の人々が往来する地域での車両突入テロ事件や、ナイフ等の刃物による襲撃事件が発生しました。トラックの突入や刃物による無差別殺傷は、準備コストが安価であることから、「ローンウルフテロリスト(注)」がテロの実行手段に選ぶことが多い傾向にあります。

    また。昨今、ISILも車両を用いたテロの手口を紹介するなどしています。

【注】ローンウルフテロリスト

インターネットやソーシャルメディアを通じて過激思想の影響を受け、特定の組織に参加することなく単独でテロ敢行を企図・実行するテロリストのこと。

(3)邦人の皆様へのお願い

ア 在留邦人及び邦人旅行者の皆様におかれては、外国では言語、法制度、警察組織や犯罪捜査手続など、あらゆる事柄が日本と異なること、また、万が一犯罪に巻き込まれた場合でも、日本の警察が行うようなきめの細かい事件対応は期待できないことをよく御理解ください。

イ その上で、「犯罪に巻き込まれない」ように注意すること、また、万一犯罪に巻き込まれた場合でも、「身体の安全を第一に行動すること」ができるよう、普段から心の準備と必要な安全対策を講じてください。

ウ あわせて、空港や駅等の交通の要所や、外国人観光客が多数集まる名所・旧跡、大規模商業施設では、外国人観光客を狙った銃乱射事件や爆弾テロ事件が発生したり、被害に遭遇する可能性が十分あることも念頭に置いて行動してください。

(4)外務省海外旅行登録「たびレジ」のご案内

外務省では、海外渡航先の最新の安全情報を提供し、事件事故や災害時等の緊急時には速やかにその旨を受信できる海外旅行登録「たびレジ」への登録を呼び掛けています。2017年5月1日以降、登録に必要な入力項目が簡素化され、「旅行予定」と「旅行者情報」について、それぞれ3項目ずつ入力すれば登録できるようになりました。本サービスは、海外居住者が別の国に旅行や出張する際にも役に立ちます。また、スマートフォンでも簡単に登録できますので、以下のURLを御確認の上、ぜひ御登録ください。 「たびレジ」URL→ https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/

2 犯罪事例と手口

  スリ・置引き、ひったくり、車上狙い等の窃盗被害は、普段から在留者や旅行者の別を問わず発生しており、注意が必要です。

(1)2017年中の犯罪被害例

ア KL市内の高級ホテルをチェックアウトした欧米人観光客が、ホテル前の車寄せでスマートフォンを片手に話をしていたところ、近づいてきた単独乗車のバイク男に、スマートフォンを奪われた。

イ KL市中心部にて「自撮り棒」で自身を撮影していた中国人観光客が、背後から近付いてきた単独バイクの男にバッグを奪われた。

ウ 銀行で大金を引き出した後、直ちに帰宅せずにレストランで飲食をしていたところ、男性に現金の入ったバッグを奪われた。

エ 9月下旬の夕方、在留邦人が友人とKL市内中心部のショッピングモール(スリアKLCC)内のレストランで飲食中、財布等が入った鞄を置引きされる被害に遭った。

オ 制服警察官(?)による職務質問名目での金銭要求事案

  昨年8月以降、出張中の邦人がパハン州クアンタン市内のホテル周辺で制服警察官と思料される者から旅券を提示するよう要求され、提示できなかった場合には「罰金」と称して金銭を要求される事案が発生しました。11月以降は、クアラルンプール市内でも類似の事案が発生しています。

  被害者は、相手方に対して身分証の提示を求めるなどの身分確認ができなかったと説明する一方、容姿や振る舞いから判断する限り、制服警察官であった可能性は否定できない模様です。

(2)インターネットを介した各種詐欺

マレーシアでは、銀行口座や素性を明らかにしなくても携帯電話番号を容易に売買できるため、これらを悪用したインターネットを介する各種詐欺が多数発生しています。

  特に、国際交流サイト等を通じて知り合った外国人に対し、マレーシアの銀行口座への送金を依頼して金銭をだまし取る送金詐欺や、インターネットオークションの落札者や入札者を偽装して商品や金銭を騙し取るオークション(取り込み)詐欺は、日本のみならず欧米各国でも多数の被害者が発生しています。

  これらの犯罪は、ナイジェリア人等の外国人集団や犯罪組織によって敢行されているケースが多く、マレーシア国内では、これらを「マカオ詐欺(Macau Scam)」、「アフリカ詐欺(African Scam)」と称して警戒を呼び掛けています。

  当館にも、「相手方の連絡先や口座番号が分かっているので、マレーシアの警察に連絡して逮捕してほしい」とか、「騙し取られた金銭(商品)を取り返してほしい」といった相談が多数寄せられますが、当地では法令により、被害届は被害者本人が警察署に出頭して届け出ることが義務化されているため、在外公館が被害届を代行して届け出ることはできません。

  皆様にあっては、電子メールやソーシャルネットワークサービスなど、直接相手方を確認することなく連絡を取り合う関係では、常に「相手の素性は不確かである」というリスクの下に交流していることを念頭に置き、むやみに住所や電話番号等の個人情報を開示しないなどの自己防衛策を図ることが大切です。

   以下に、当館でよく取り扱う詐欺事案について紹介します。

ア 国際送金詐欺(いわゆる「ロマンス詐欺」等)

  国内外の「国際交流サイト」等で知り合った外国人にそそのかされ、マレーシアやその他の国々へ国際送金してしまう事案は、男女・年齢・季節を問わず多数発生しています。典型的な犯罪例は、架空の異性を名乗り(男性の場合、欧米系白人で企業コンサルタント、米国軍人、銀行員等を称することが多い)、上述したサイト等で被害者を探して架空のプロフィールに基づくメールを送り付けるものです。

被疑者は、数週間から2、3か月程度親しくメールを交換して被害者からの信用を得た後、旅行費用、病気治療費や商品通関税金等の様々な口実で数十万円程度の送金依頼を行い、送金を確認すると、連絡を取らなくなる、あるいは何度も同様の依頼を行い、被害者が不審に思うまで金銭をだまし取り続けるというものです。

この種の犯行は、いわゆる「振り込め詐欺」と同様に組織的に行われており、相手方のほかに税関職員や宅配業者等、複数の人間が巧妙に役割を分担して送金を促すケースが少なくありません。したがって、交流サイトやSNS等による外国人との交流では、不良外国人による詐欺等のトラブルに巻き込まれる可能性があることを強く認識いただくようお願いします。

また、このような詐欺事件においては、一度送金すると更に高額の送金を要求することもあるため、「金銭の貸借や立替えを依頼するようなメールが届いたら、直ちに連絡を絶つ」といった厳しい態度で臨み、金銭の無心には一切応じないことが肝要です。

イ インターネット・オークション詐欺

日本国内でネットショップやインターネット・オークションサイトに出品している邦人が、「品物を送付したが代金を支払ってもらえない」、「代金を支払ったのに商品が届かない」等の相談が多数寄せられています。

商品をだまし取られるケースでは、スマートフォンデジタルカメラ等の電子機器や、貴金属類等の容易に換金できるものが狙われています。

  多くの手口で犯人側は、高額な金額を提示して被害者との直接取引を持ち掛け、あるいは海外の銀行を偽装した送金受付の文書や電子メールで被害者へ送金したと誤信させ、品物を送らせようとします。

  多くの場合、犯人はEMS(国際スピード郵便)で被害品をマレーシアへ送るよう要求し、EMSの配達状況追跡サービスを悪用して郵便局到着を見計らい、被害品を郵便局の窓口で直接受け取って逃走している模様です。

  これらのケースでは、配送先住所に居住事実がなく、受取時に提示する身分証明書も偽造身分証で人定が判明できないようにしていることがほとんどです。

  したがって、海外との取引に際し、殊更にオークションサイトを通さない直接取引を要求されたり、銀行口座への入金確認前にもかかわらず、「すぐに送ってほしい」との依頼を受けたりした場合は、直ちに取引を中止するとともに、「これ以上取引を継続する意思はない。必要等があれば警察に相談する」などと相手方に伝え、これ以上の連絡を断念させ、被害を未然に防ぐ必要があります。

3 テロ・爆弾事件等発生状況

(1)テロ情勢

  マレーシアでは、2016年6月28日、KL市郊外にてISIL関係者によるテロ事件が発生し、8人が重軽傷を負う被害が発生しましたが、その後、死傷者を伴うテロ事件は発生していません。

  しかし、マレーシアには欧米系資本のホテルや飲食店が多数進出しているほか、特にKL市内にはショッピングモールやナイトクラブ等、欧米など世界各国からの観光客が多数訪れる施設が存在します。このため、欧米人観光客を狙ったテロ事件が発生した場合には、在留邦人や邦人旅行者も何らかの被害に巻き込まれる可能性は否定できないといえます。

(2)武装勢力の侵入事案(東マレーシア・サバ州

  在コタキナバル領事事務所管轄のサバ州南東部ラハ・ダトゥ地区周辺では、2013年2月に数百人規模の武装勢力スールー王国軍」がフィリピン側から侵入し、鎮圧に数か月を要したという事案が発生しました。翌2014年6月には、当該勢力の関係者が複数逮捕され、2017年6月、9人に対して死刑判決が言い渡されました。

  2017年12月末現在、当該地区に対しては、海外安全情報(旧渡航情報)における危険情報のカテゴリー(4段階)のうち、レベル4(退避勧告)に準じる「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を継続発出中です。

4 誘拐・脅迫事件等発生状況

(1)誘拐事件〜サバ州東海岸部における誘拐事件の発生動向

在コタキナバル領事事務所管轄のサバ州東海岸部では、かねてから身代金目的の拉致・誘拐事件が頻発しており、2014年4月以降、7件の誘拐事件が発生しています。なお、2016年4月、サバ州東海岸のセンポルナ沖リギタン島にて誘拐されたマレーシア人船員4人については、無事解放されています。

 ・2014年4月 

センポルナ近海(シンガマタ島)外国人旅行者1名、フィリピン人従業員1名

 ・同年5月 

ラハ・ダトゥ近海(バイキ島)養魚場マネージャー1名

 ・同年6月 

クナ近郊(サバン村沿岸)養魚場オーナー1名、フィリピン人従業員1名

 ・同年7月 

センポルナ近海(マブール島)海上警察官2名(内1名射殺)

 ・2015年5月 

サンダカン海岸 レストランオーナー1名、客1名

    ・2016年4月 

     センポルナ近海(リギタン島)船員4人

    ・同年7月 

     ラハ・ダトゥ沖合 船員5人

各事件には、フィリピン南部に拠点を置く武装集団が関与しているとされ、リゾート施設や養魚場等の海に面した場所で被害者を拉致し、高速ボートでフィリピン南部の島へ連れ去っているといわれています。 本事案を巡っては、「犯人の一部が逮捕された」といった報道もされていますが、犯行グループを壊滅するには至っていません。

これら一連の誘拐事件を受け、サバ州東海域では、2014年7月から夜間航行禁止令が発出されており、禁止時間帯に許可なく同海域を通行する船舶は警察により逮捕されたり、罰金又は勾留刑が科されています。

上述のとおり当該地区には、2017年12月末現在、海外安全情報の危険情報カテゴリー3「渡航は止めてください(渡航中止勧告)」を継続発出中です。

  なお、2016年11月22日、サバ州東部海岸に面するフィリピン南部スールー海域について、広域情報「フィリピン南部スールー海域における商業船舶に対する襲撃事件に伴う注意喚起」URL→ http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2016C313.html )を発出しておりますので、これらの海域には絶対に立ち入らないようにしてください。

(2)脅迫事件

   地元紙の報道等によりますと、ビジネス絡みのトラブルから脅迫事件に発展する事案がしばしば発生しているということです。

脅迫事件の場合、いわゆるギャングやマフィアが関係する事案が少なくないことから、「他人から妬みを買わない」、「事件に巻きこまれない」ことを念頭に、無用のトラブルを避けることが賢明です。

5 対日感情

  全体的に良好ですが、第二次世界大戦における各種戦役等の記念日、あるいは、いわゆる南京事件従軍慰安婦をめぐる報道が行われた際には、これらの記念日・報道等を捉えて各種示威活動が展開される可能性があることを念頭に置く必要があります。

6 日本企業の安全に関する諸問題

  邦人及び現地社員に対する犯罪被害防止対策の実施とあわせて、他国企業で警備員や社内の者が手引きしたと思われる窃盗事案が発生していることを踏まえ、社員及び警備員の採用人事や勤務管理等には、特に注意を払う必要があります。

(現地公館連絡先)

○在マレーシア日本国大使館

  住所:11, Persiaran Stonor, Off Jalan Tun Razak, 50450 Kuala Lumpur, Malaysia

  電話:(03)2177-2600

  ホームページ:http://www.my.emb-japan.go.jp/Japanese/index.htm

○在ペナン日本国総領事館

  住所:28th Floor Menara BHL, 51 Jalan Sultan Ahmad Shah, 10050 Penang, Malaysia

  電話:(04)226-3030

  ホームページ:http://www.penang.my.emb-japan.go.jp/index_jp.htm

○在コタキナバル領事事務所

  住所:18th Floor, Wisma Perindustrian, Jalan Istiadat, Likas, 88400 Kota Kinabalu, Sabah, Malaysia (P.O.Box 440)

  電話:(088)254-169

  ホームページ:http://www.kotakinabalu.my.emb-japan.go.jp/ja/index_j.html

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